'それなりに'うまくいっている→を→'おもいっきり'しあわせに

「それなりに恵まれている方だと思うし、それなりにうまくやってきた。・・・あれ、’それなり’って何だろう?」  そんなあなたに’おもいっきり’のしあわせを。 @カウンセラーいなこ

どんなに理不尽に思えるできごとにも、やはり何らかの意味があるのかもしれない。

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悔しいけれど、やっぱりあいつも、私のメッセンジャーだったのね。

 

 

 

先日、新車を買って1か月で、信号無視の車に当たられ事故に遭った話を書いたが、

https://www.aikoingk.com/entry/2020/06/04/080000

今日はそのsideB、事故の相手との話を書こうと思う。

 

 

7、8年前の8月末、ペーパードライバー生活に終止符を打ち、私は軽自動車を購入した。

 

そもそも、時間のある大学生のうちに、一応免許を取っておこうという理由だけで取ったから、運転に興味もなく、自分で運転して行きたいところもなかったので、ペーパードライバーになるのはあっという間であった。

 

当時家にあった父の車はミッションだったし、みえっぱりの私は、「女なのにミッションが運転できる」というのが格好いい気がして、ミッションで免許を取った。

しかしあんな大きな物体を操縦するというのが怖くて(笑)、前も注意して見ながら、クラッチを踏んでチェンジを変えるというのが難しすぎて、最後の実車テストは1回落ちて、2回目もお情けで通してもらった気がする(結果だいぶかっこ悪い・笑)。

 

なんとか免許を取り、当時家族では父しか免許を持っていなかったので、父を乗せて家の車で練習に出かけた。

そしたら案の定、車線変更のために安全確認したらウィンカーを出し忘れる、道を考えたらチェンジを忘れる、何かをしたら何かを忘れるという状態で、お決まりのエンストもし、父に何度も「危ない!!!」と怒られた。

 

家に帰ったら、「いなこの車は全身麻酔して乗らなあかん、怖い怖い。」と家族に言われ、プライドを傷つけられた私は、「もうこんなジジイ、年いって歩けなくなっても一生乗せてやらん!(怒)」と心に誓ってこっそり悔し涙を流し、でも実際自分でもめちゃくちゃ怖かったし(笑)、生活に必要もないので、それ以来1回も乗ることはなかった。

 

いやあ、若かったなあ。こんなことで悔しくて泣くなんて。今ならうまい返しで笑いをとるとこなのに。やっぱり年とともに、それなりにまるくはなってるんだな(笑)

 

 

とにかく自分でも怖かったので、それ以来、「一生助手席の人生でいい」と思っていたのだが、その後就職して、仕事でどうしても車に乗らないといけないことになった。公用車で、車で15分程度のグループ会社に毎月1回、1人で会議に出なくてはいけなくなったのだ。

 

もう父は嫌なので、その頃には免許を取っていた妹を、オートマに買い替えていた父の車に乗せて練習した。

やはり妹も怖がってイライラしていた(笑)。私も今思えば怖い(笑)。

 

しかしおかげで、公用車で決まった道だけだが少し乗るようになった。

そして、車の便利さを知り、通勤も車にするべく、初めての高い買い物、軽自動車を購入したのだった。

 

 

これまでの貯金と、夏のボーナスで一括購入。

8月末に納車され、それはそれはうれしく、大事にしていた。

 

 

しかし、その約1か月後の10月はじめに事故に遭う。

交差点の10メートルほど手前から青信号だったので、何も疑うことなく交差点に進入した私は、直角に交わる道路の右側から走ってきた白い軽自動車に当たられたのだった。

 

向こうが急ハンドルで私の前の出てよけ、また急ハンドルで元の車線に戻ろうとした勢いで、運転席側を下にして横転。

私も急ブレーキで止まり、とりあえず車を降りた。

 

 

「大変なことが起こった。」

さっきまで楽しく仲間と遊んでいたのに、世界が一変した。

 

 

相手の車は、運転席を下にして横転しているので、助手席側のドアを押し上げて人が這いあがって出てきた。

ゾンビかよ。

 

 

金髪にピアスの、二十歳そこそこの青年。

 

 

ほんまこいつーーーーーー!!!!!

怒りに震える気持ちで、なんと言ってやろう、でもこいつは素直に信号無視を認めるだろうか、どんな態度にでてくるだろうと、イーッとなっていると、

出てきた金髪ピアス野郎は開口一番、

「僕の信号無視です!すいません!」

と頭を下げた。

 

 

お、おう、それは認めるねんな。

 

 

頭には来ているが、こんな、相手が120%悪いと思っているときでさえ、人をののしることに抵抗がでてくる。なぜかこっちもドキドキし、めちゃくちゃに怒って追い詰めたい気持ちはあるのに、ことばが出てこない。

愛想悪くするのが精いっぱいで、とりあえず携帯で警察に電話した。

 

 

救急車もいるかと聞かれる。

私の身体には何の衝撃もけがもなかった。

 

 

「救急車いります?」

ああっ、何でこんな時も敬語使ってしまうねん!

自分に腹を立てながら、相手に聞く。

 

 

このとき、女の子もいた。

金髪ピアス野郎の彼女らしくない、別に派手なギャルでもない、普通の女の子がいた。

助手席に乗っていたのだろう。

どうやって出てきたのかは覚えていない。私が電話している間に金髪ピアス野郎が引っ張り出したのか。

 

 

細身で割と背の高い金髪ピアス野郎が、女の子の顔をのぞきこんで、「大丈夫?」と聞く。

 

 

はあぁーーーーーっ!?

何が「だいじょうぶぅ?」じゃい!

全部テメーのせいだよっ!!!

 

 

どうせ女の子にかまけて浮かれてしゃべりながら、交通ルールをなめくさって軽い気持ちで信号無視したのだろう。

このクズ野郎が!!!

 

 

「僕は大丈夫です!」

夜なので見えにくかったが、よく見ると、金髪野郎の肘から血が流れていた。

 

「でも血出てるやん。」

運転席を下にして横転したから、運転席側の窓ガラスが割れたところに、肘をついたのかもしれない。

 

「女の子の方は?大丈夫?どっか痛いとこない?」

女の子の方は、自分で立って意識もあるし、見たところ外傷もなさそうだが、片手で頭を抱えて呆然としていた。

無理もない。

助手席側に座っていたから、横転したときは宙に浮いていたのだろうし。

 

かすかな声で、「なんか頭痛いかも……」と女の子。

 

 

「じゃあ一応、救急車も呼びますよ?」

救急車も念のためお願いした。

 

 

警察が来て現場検証。

 

その間、名前や住所、年齢、職業などを、書類に書かされた。

職業は、チェック方式だった気がする。

「会社員」、でいいか。正しくは会社じゃなくて病院だけど。そんな選択肢ないし。

職種じゃなくて雇用形態を聞いているみたいだし。雇われの身であることには変わりないし。

 

 

(注釈:話がそれますが、これまでブログでは、自分の職場を「会社」と書いてきましたが、正しくは、「病院、施設」です。私は医療従事者です。しかし、看護師のようにメジャーな資格ではなく、一般の人は知らない人が多いマイナーな資格です。

私は、職種について隠しておきたいわけではないのですが、なにぶん狭い業界なので、何かの拍子に前職場や今の職場が特定されて、思いがけず職場に迷惑がかかるのは本意ではないので、一応職種名は伏せています。誰が興味あるねん!ですけど念のため・笑。)

 

 

救急隊員が到着して、警察と、どこの病院に運ぶか話している。

どうやらよりによって、うちの病院に運ぶようだ。

 

「それ、私が勤めてる病院です……」

 

思わず言うと、「看護師さん?じゃあちゃんとそれ書いといてね。」と警察のおじさん。

 

「いや、看護師じゃないんですけど……○○○○○っていう仕事です。」

 

言ったって、どうせわからんでしょ、と思いながら。

 

 

すると、それを聞いていた金髪ピアス信号無視野郎が、

「○○さん(←略称。たとえば、「キャビンアテンダント」を「CAさん」と呼ぶ感じ)ですか?」

と話に入ってきた。

 

「え???何でそんなことば知ってるんですか???」

 

「僕、××の学校行ってるんです!」

 

金髪ピアス信号無視野郎は、キラキラした笑顔で言った。

 

 

 

××というのは、×××××という資格の略称。

私の職業には、他に密接に関連する2種類の職種があり、そいつの××と、私の○○と、もう1つ△△の3つの職種で、1つの部門なのだ。

病院では、その3つの職種がセットで配置されていることが多い。

 

 

そのやりとりを聞いていた若い警察官が、こういう縁ってあるんだよねーとでも言うように、こちらを見てニヤッとした。

 

 

 

「えーーーーーっ!そうなんやぁーーー!一緒ーーー!!!

そっかぁ、××の学生さんなんやぁ。後輩にあたるんやぁ。

不思議な縁やねえ、がんばって立派な××になってくださいね!」

 

 

 

ってなるかぁーーーーーっ!!!!!

 

 

 

私たちの職種は、学校での座学以外に、学生時代に必ず実習が何回かある。

病院や施設に1ヶ月、2ヶ月通い、スーパーバイザーについて、現場で実際の患者さんに関わって勉強する。

それに合格しなければ、国家試験も受けることができない。

実習で、患者さんやスーパーバイザーとの関係づくりにつまづいてしまう学生も多い。

 

学生も緊張するし気を遣うし大変だが、学生を受け入れるスーパーバイザー側も、毎日毎日学生と一緒にいて指導するのはなかなか疲れる。

 

養成校の先生たちも、スーパーバイザーの大変さを理解しているし、しかし30人生徒がいたら、実習を受け入れてくれる施設を30人分確保しないといけないため、病院、施設にはとても気を遣っている。

 

そんなわけで、学生からしたら、志している職業の先輩は、とても気を遣う存在なのだ。

 

 

そういう存在の先輩を、学生である自分の信号無視で事故に巻き込んでしまったことがわかったら、

「やばい!××の学生であることは絶対隠しておこう。」となるか、

「すみません、僕、実は××の学生なんです……」と恐縮して申し訳なさそうに申し出るのが、

私の考える常識であった。

 

 

それなのに。

こいつはこの状況で、仲間見つけた!とばかりに、うれしそうに馴れ馴れしく話しかけてくる。

 

 

アホ!

こいつは真性のアホ!!!

 

 

怖かったし、こっちは新車を1か月でめちゃくちゃにされて動揺した気分でいるのに、加害者のこいつが悪びれずのんきにしていることに、腹が立つやらあきれるやらであった。

 

 

 

警察は、現場検証を終え、信号無視はもちろん違反だが、交差点では、たとえ青信号でも何があるかわからないという前提で運転するように、とまとめのことばのように私に言った。

 

 

相手が信号無視を認めたため、全額向こうの保険で修理となると、後日保険会社から連絡があった。

 

 

私の憤りはしばらくおさまらず、ことの顛末を、職場のうちの部門のトップの上司にも興奮気味に報告した。

そのトップは、信号無視野郎と同じ××の職種の人。

 

「けが人を治す仕事やのに、けが人作ってどうするねん!!!」

と息巻く私に、

「そうやそうや!そいつ、うちに実習来させて落としたったらいいねん。」と同調してくれた。半笑いで。

(冗談ですよ!うちは、学生さんに懇切丁寧に教える、人気の実習地でしたよ!)

 

 

そう、みんな、私があまりにキレまくっていたのがおかしかったのか、半笑いだった。

「なんか……笑ったらあかんけど、おもしろい……」

 

母までも、私のいないところで、「お姉ちゃんえらい怒ってやったわ。」と妹に笑って話していたらしい。

 

 

いやいやあなたたち、私が無傷で帰ってきたから笑えるものの、一歩間違えば、大事故だったんですよ!!!

 

 

 

金髪信号無視野郎は、免許取り立てだったらしい、と警察か誰かにちらっと聞いた。

 

あんなナメた野郎と変な縁があって……ついてないぜ。

結局腹は立つのに大した文句も言えなかったことにフラストレーションがたまり、しばらく思い出しては腹を立てていた。

私の無残な姿になったミラココアを思い出して、イーッ!となっていた。

 

世界中の汚いことば集めてもっと大声でののしって、とことん追い詰めて、金品でもゆすってやればよかった(←違法違法)。

 

 

 

でも今、思うのだ。

 

理不尽感が大きすぎて、さすがにあのできごとから学ぶことはないと思っていたけれど、よくよく考えれば、ラッキーなことがいっぱいあった。

 

 

あの金髪信号無視野郎が、素直に信号無視を認めて申し出たこと。

ドライブレコーダーもつけていなかったので、そこでごねられたら、ややこしくなっているところだった。

警察によると、事故時にどちらも動いていた場合、責任が10対0になることはまずないそうだ。

あいつが信号無視を認めたことで、私の保険は使わずに済んだ。

 

そして何より、車は派手に損傷したが、私は何のけがもしなかった。

 

 

あの頃、私もペーパードライバーにちょっと毛が生えた程度の運転歴で、まだ、決まりきった職場と家の往復の道しか走れないくらいの運転技術だった。

 

その後、徐々にいろんな道を走り出したら、悪気なく危険な運転をしてしまう経験を結構した。

 

車線変更するとき、安全確認が不十分で、後ろを走っている車にクラクションを鳴らされたり、

ナビの言っていることがわかりにくくて、どこで曲がるのかわからず、蛇行運転をしてしまったり、

初めての道で、一方通行の表示に気づかず、進入禁止のところに入りかけたり、

わかりにくい三叉路で、どの信号を見ていいのかわかっておらず、無視しかけたこともあった。

 

 

 

あの金髪信号無視野郎は、あの時の私には、運転をなめて交通ルールを軽視している浅はかな若者に見えたが、もしかしてあいつも、いっぱいいっぱいで、本当に悪気なく信号を見落としてしまったのかもしれない。

 

 

あの頃、私は運転に少し慣れたつもりになりかけていたが、あの事故があったおかげで気を引き締め直して運転するようになった。

少し慣れて、運転できる自分に酔って、大丈夫「だろう運転」になっていたが、たとえ青信号でも、何かあるかもしれないという「かもしれない運転」をするようになった。

 

 

あの時は、たまたまやつが加害者側になったが、実はお互い、どっちもどっちの運転能力だった。

あの事故がなければ、私がいつか、加害者側になっていたかもしれない。

あの事故のおかげで私は、けがもせず、お金もかけずに、身をもって安全運転を勉強できたのだ。

 

 

やっぱりあれも、あれでさえも、意味ある出会いだったのかもしれない。

 

 

 

やつは、××になったのだろうか。

あんなに空気が読めなければ、どうせ実習に落ちるだろう、落ちてしまえばいいと思っていたが(笑)、冷静になってみれば、自分から信号無視を認めて謝る、素直で憎めないやつだった。

 

スーパーバイザーにも就職先にも、意外とかわいがられて、素直だから成長しているかもしれないな。

 

 

 

これも、私を守るために、無意識が引き起こしたできごとだったのかもしれない。