美容院に行ってきた。
3月上旬以来だ。
いつもは少なくとも1.5か月に1回は行っているのだけれど、退職転職で何かと支出が多かったり、あてにしていた退職金が入るのも、退職から2か月後だったりで、少しお金のことが心配になってしまったので、手元に現金を置いておこうと思い、スパンを開けていた。
そうこうしているうちに緊急事態宣言が出て、美容院も席数を減らして、予約が取りにくくなって、なんだかんだで6月になってしまった。
美容院のSNSで、近況は何となく知っていたが、3月4月はやはり客足が遠のいているようで、気にはなっていた。
それでもできるだけのことはさせてもらっていますと、どんな対策をしているのかをSNSで紹介されていた。
今行った方が、ちょっとでも売り上げに貢献できるんだろうな。
もうちょっと待ってくださいよー。
そんな気持ちで、SNSを見ていた。
待ちに待った久々の美容院。
くせ毛が湿気でうねるので、年1回、夏場だけ縮毛矯正をあてている。
カットと、縮毛矯正と、トリートメントをしてもらって、すっきりしてお会計するときだつた。
「いなこさん、これ……。テレビで、医療従事者の方が本当に大変そうなので、何かできないかということで、医療従事者の方にお渡ししてるんです。
頭皮のマッサージができる美容液なんですけど、ちょっとでも癒しになるかなと思って。」
サロンでしか取り扱っていないケア用品のシリーズの、頭皮マッサージ用の美容液の現品を、プレゼントしてくれた。
涙が出そうになった。ちょっと出ていた(笑)。
大変だったから、私の大変さをわかってもらえたから、じゃない。
私は、そんなに大変ではなかった。
コロナにかかった人を受け入れている病院の医師、看護師をはじめとする、治療に直接あたる職種の人は、確かに体力も神経も使って大変だと思う。
しかし私は、医療従事者とはいえ、ちょうど緊急事態宣言中、退職前で有給消化させてもらって働いていなかったということもあるが、働いていても、私の職種は、コロナにかかった人の治療にあたる仕事ではない。
また、病院や施設というのは、冬場になると、コロナがなくても、インフルエンザやノロウィルスが流行る可能性があるので、毎年秋口からは感染対策を強化している。
感染防止のマニュアルや対策委員会もあるし、職員みんなにそれなりの感染予防の知識がある。
そして、入院している方については、外に出ないので、体調や環境もこちらが管理しやすい。
ウイルスを持ち込むのは、むしろ出入りする職員か、面会に来る方だ。しかしこういう状況のときは、面会も制限できる。
そんな中で働くので、「テレワークできない系」の仕事であるという点では確かにリスクはあるけれど、病院や施設の中で働くのは、私の個人的な感覚ではあるが、ある意味安心感がある。
私からしたら、美容院や飲食業など、他のサービス業の人の方が大変だろうと思っていたのだ。
感染対策に慣れていないし、やってくるお客さんの衛生観念が高いとも限らない。
感染予防対策にかかるコストはかさむのに、売り上げは大幅に減ってしまっているだろう。
そこの美容院は、「うちも毎月借金だけど、しんどい時は助け合いましょう」と、近隣の飲食店に、スタッフのお昼ご飯を毎日注文するので、テイクアウトをしているところは連絡くださいとSNSで呼びかけていた。
私より、美容師さんたちの方が大変なのに……そんな思いで、涙が出そうになったのだ。
「ぜんぜん私、大変じゃないんですけど……」と言いながらも、ありがたくプレゼントをいただいた。
来月行くときに、お礼においしいお菓子でも探して差し入れしようかな。
いやいや、もらったらすぐお返ししたくなるのは、受け取り下手の悪い癖だな。
でも気持ちがうれしかったな。
応援したいな。
そうだ、これからも、いいサービスを受けよう。
今回は縮毛矯正を受けたのでしなかったが、いつもは毎回、カットに加えて、ヘッドスパとトリートメントをしていた。
だけど転職して、気持ち的にお金の不安が出てきたので、しばらくはヘッドスパかトリートメントのどちらか1つだけにして、節約しようかなと思っていたのだ。
でもやっぱり、いいサービスを受けて、気持ちよくお金を払って、きれいにしてもらって喜ぼう。
顔や体をギュウギュウもまれたりゴシゴシされる感じのエステとかマッサージが、痛くて合わない私にとっては、ヘッドスパが唯一の癒しだし。
やっぱりこれからも、ヘッドスパもトリートメントもしてもらって。
きれいでいよう。
おしゃれをしよう。
きれいにしてもらって、喜んで帰る。
美容師さんにとっては、やっぱそれが1番だよなあ。
このお店の心遣いが、私にお金を感謝して使わせ、そのお金を得た美容師さんたちがまた楽しいことに使って、そのお金を得た人がまた、……
うん、いい感じだ。
ありがとうございました。
うまいこと、心つかまれちゃったなあ(笑)。